風前燈火堂

投資やお金のことについて適当に呟きます

投資をしないということは日本円に100%投資するということ

皆さん、投資してますか?運用と言い換えてもいいかもしれません。投資とは一言でいえば、自分が持っている資産をいかに増やすかということです。身近なところだと株式投資や不動産投資、最近だと仮想通貨(暗号資産)やNFTといったものもありますね。さらには将来のために勉強したり資格を取ったりするために時間やお金を投じることも、広い意味での投資(自己投資)と言えるかと思います。ここでは単純に手元のお金をどうやって増やすかという、狭義の投資について考えてみたいと思います。

最近、若い人の間でも投資に関する意識が高まってきていると感じます。以前は投資というと怖いとかリスクが高いといったイメージを持つ人が多く、あくまで金融リテラシーの高い一部の人が行っているという印象でした。それが今やNISAやiDeCo等で国が制度として投資を後押ししていることもあり、猫も杓子も投資を語るようになってきたと感じています。私の周りでも、米国株を買ってみたとか、投資信託の積み立てを始めたという人が増えてきています。一方で、とりあえずお金は銀行に預けたまま、何の運用もしていないという人も依然として多いのではないでしょうか。かくいう私の妻もそのタイプで、投資とか危なそうだし要するにギャンブルみたいなものでしょ?と言って今だに貯蓄一辺倒です。円安で日本円の価値が下がるから少しでも外貨に替えておけと口を酸っぱくして言っているのですが、頑なに貯金を崩そうとしません。不思議なもので、貯金が一番安全と思っている人は為替やインフレのリスクを全く考慮しないものです。元本が保証されていれば、リスクはゼロだと思い込んでいるのかもしれません。しかし預貯金の額面は、今現在の価値を表しているに過ぎません。いま銀行口座にある100万円が、来年も100万円の価値を保持しているとは限らないのです。

ここ数日で急速に円安が進んでいますが、おそらくまだ序の口でしょう。利上げに移行しつつある欧米と異なり、日本は当面金融緩和を続けざるを得ない状況です。市場に流通するドルやユーロの絶対量が減っていくのに対し、円は際限なく刷られ続けているわけですから、円の相対的な価値は下がる一方です。日本で働き日本で消費する分には、円の対外的な価値が上がろうと下がろうと関係ないと思うかもしれません。実際ここ30年間、日本の賃金は海外に比べて相対的に下がっているのですが、額面上の平均年収は約400万円とたいして変わっていません。しかし今の日本は鎖国をしていた江戸時代とは異なり、自給自足で成り立つ国ではありません。食料や資源も、外国から買わなければ生きていけないのです。皆さんの手元にあるパソコンやスマートフォンも、外国の企業によって作られたものが多くを占めているのではないでしょうか。最近ガソリンやiPhoneの値段が高いと感じることは、円の価値が下がっていることと無関係ではないのです。

お金を銀行に預けたまま何の運用もしていないという方に覚えておいて頂きたいのは、それは日本円に100%投資している状態と同義であるということです。投資の世界には「卵をひとつのカゴに盛るな (Do not put all your eggs in one basket)」という格言があります。これはまさにリスク分散の考え方で、自身の資産配分(ポートフォリオ)をできるだけバランス良く複数の金融商品で組み合わせるべきということです。なぜなら単一の金融商品にのみ全力で投資していると、その価値が毀損された際に大きな損害を被るからです。

日本で生活していると実感が湧かないかもしれませんが、日本円とは数ある通貨のうちの一つに過ぎません。外から見れば株式や債権と同じ、価値が変動する金融商品の一つに過ぎないのです。リスクを恐れて貯金だけしている人は、実は日本円にフルベットするというハイリスクな賭けをしているのです。預貯金の利息が6%以上あった過去ならいざ知らず、現在の預金利率は0.005%以下、インフレ率を考慮すれば実質的にマイナス金利の状態です。額面上の金額は変わっていなくても、預貯金の実質的な価値は年々目減りしていることに気付くべきです。

ここで最初の問いに戻ります。皆さんは投資をしていますか?天下無敵の無一文でもない限り、誰もが何かしらの投資をしているはずです。日本円に投資するか、株式に投資するか、不動産に投資するか、はたまた自分自身に投資するか、選択は自由です。